恋する! マトリョーシカ


「先輩、そこは伏せてください。
 嫌いだった『ピー』が中途はん……」

「もういいわ、めんどくせぇ」

 冷ややかに遮られた。

 ムカつきます、胸糞悪いです、先輩。


 けれど、よくよく振り返って考えてみれば、喧嘩の原因は私にあった。
 いつだってそうなのだ。

 いつだって、私の我儘や、くだらないプライドが引き金となる。


 それなのに先輩の方が折れてくれた。
 それもいつものこと。



「だから機嫌直せ、な?」

 言って姉崎先輩は屈託なく笑った。

 こんな風に、私の罪悪感に更に追い打ちをかけるなんて、酷いです。
 酷過ぎます、先輩。


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