恋する! マトリョーシカ
身体がゆっさゆっさ揺れている感覚。
でもなんだか気持ちいい。
私、寝てしまったのだろうか。
重い瞼を必死で持ち上げる。
細く開けた視界にぼんやりと、女のそれではない筋肉質な胸板、太い首筋。
黒い短髪。
――って、え~~~~?
私は知らない男の人にお姫様抱っこをされていた。
彼の額には薄っすらと汗が滲んでいて。
もう12月だというのに。
そんなに必死になって、私をどこへ連れ去ろうとしているのだ。
やだ、拉致される。
どうして?
どうして?
何故私なんかを?
重いのに。
軽い子の方が絶対楽なのに。