恋する! マトリョーシカ


 ゆるゆると半身を起こせば、姉崎先輩は私のすぐ傍にストンとしゃがんだ。

 手には何も持っていない。

 しまった、遅かった。
 ブツは既にどこかへ隠されてしまった。

 これでは私の愛は成し遂げられない。


「どこに隠したんですか?」

「言う訳ねぇだろ?」

 勝ち誇った顔でフフンと鼻で笑う姉崎先輩は、憎たらしいけど格好いいから一層憎たらしい。


「うう……」

 唸ってみた。


「あのさ、俺も男だし、エロ本の一冊や二冊大目に見ろよ。
 お前を無理やり押し倒すよりずっとマシだろ?」

 不意に柔らかい笑顔を見せて、優しく諭すように先輩は言う。


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