恋する! マトリョーシカ


 遊川眞琴先輩は、それはもう見目秀麗。
 私たち一年女子の間でも超がつくほど有名で。

 私も彼女に羨望の眼差しを注いでいる、後輩女子のうちの一人である。

 その遊川眞琴先輩の彼氏の苗字が、確か『姉崎』で。


 いや、違う。
 絶対に『姉崎』違いだ。
 珍しい苗字ではあるけれど、きっともう一人、真の姉崎先輩が存在するはず。

 とても格好良くて、何をやっても秀逸で。
 優しくて、上品で、王子様のような人に違いないんだ。

 こんな、『オゲレツ戦隊野犬ジャー』なんかじゃないもん。


「ええっと……
 お名前は?」

 高橋先生が私の顔を覗き込む。

 ああ、私の名前なんか知らないですよね、そうですよね。
 狂暴な野犬の名前は知っていましたけれどね。

 きっとこの野犬は不良で、しょっちゅう授業をサボってはここへ来ているに違いない。
 そして、フォーシーズン365日、フェロモンを大量放出している高橋先生をくどいたり。
 ベッドに押し倒したり。

 不潔だ。卑猥だ。


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