愛してると言わないで。
*
「これ、持って帰って」
ガランとした部屋に、そうアタシの声が響いた。
「いらない。勝手に処分していいよ」
アタシが捨てられないことを知りながら、そんなことを言うなんて残酷な人。
「…そんな勝手なこと言わないで」
アタシは無理矢理それを彼のポケットにつっこんだ。
彼はアタシを見ながらため息をはく。
「なぁ、俺たちさ、本当に今日で終わりなのか?」
真っ直ぐとアタシを見つめる彼には、迷いがあった。
言いながら、きっと彼女のことを思っているんだ。
アタシには分かる。
彼がなにを感じているのか。
恋とはまた違う意味で、アタシの会ったこともない彼女を大切にしているか。
「…話し合って決めたことだよ
いまさら、どうにも出来ないよ
アタシも社員さんもみんな困る」
別れたくない。
なんて、軽々しく言えない。
それは、アタシはもちろんのこと、彼が一番分かっている。