Platinum Kingdom【完全完結】
玄関を開けると、
「…更紗」
「…お父様、お母様…」
スーツ姿のお父様と、フォーマルスーツ姿のお母様がいた。
「お仕事、御苦労様でした」
私は労りの言葉を他人行儀に掛け、少し頭を下げた。
「…更紗、あなた明日…」
「…はい、お祖母様からお聞きしました」
「…無理にすることはないんだぞ」
お父様からそんな言葉が出たとき、びっくりした。
私は目を見開いて、お父様の顔を見た。
「え…」
「…更紗、お前は自由に生きればいいんだ」
…どう、して…?
だって今までそんな言葉、言われたことなかった。
『勉強の方はどうなのか?』とか、
『テスト、今回の出来はどうだったのか?』とか。
『白蕗家の人間として、恥じぬ生き方をしろ』
廊下ですれ違っても、
食事の時も、
こんなことしか言われなかったのに、そんな言葉、何で…。