Platinum Kingdom【完全完結】
「何も聞かずに…お願い…」
「…何があったのかは知らないけど…。
ちゃんと言ってくれなきゃ、分かんないよ?」
「…うん」
「…けどね、それがどんな理由であっても、子供を置いてきちゃ、いけないと思うけど」
少し棘【とげ】のあるような言い方で言う、マリナ。
…そんなこと、言われなくたってわかってる。
子供を産んだ責任だってあるのも知ってる。
親として、子供1人を置いて行くなんてこと、あってはいけないことだってこともわかってる。
…だけど
「…わかってるよ、そんなこと!
けどもう、限界なの!」
「…更紗…?」
「私は…っもう辛い…っ!」
抑えて来たものが、こぼれる。
心が、もう、悲鳴をあげてる。
ああ、こんなにももう私のなかで限界が来てたんだって。
今知った。
『大丈夫』って思ってたけど、『大丈夫』なんかじゃなかったんだ。
結婚が、こんなにも辛いことだなんて知らなかった。
今さら、辛いことができるなんて思ってもみなかった。
…私は、親であっても、弱いの。
駅のホームの真ん中で涙をこぼす私はひどく滑稽だろう。
『何事だ』とも思われるかもしれない。
…思いもよらない、マリナがここにいたことが、心のストッパーを開けてしまったのかもしれない。