一期一会
 

 無邪気に笑う子供を見ては、まるで天使と戯れてるかのようにお喋りし、遊び、陽光に身を包まれつつまどろんでいた。しかし無情にも面会時間が残り少なくなると、子供達の表情から笑顔がなくなり、辺りにはすすり泣く声がこだまする。

 母親は身が引き裂かれる想いを抱きながらも、気丈にも笑顔を作り、声を押し殺しながら泣きじゃくる子供をさとしては後ろ髪を引かれる思いでその場をあとにするのである。

 この次に友達がいた者は幸せだったろう。

 愛する者を亡くし、失望しても同じような境遇の者達が集まり、身を寄せ合いながら共に励ましあっていた。

 この次には発狂した者が幸せだったろう。そして誰よりも早くこの苦しみから解放され、天に召され約束の地にて愛する人に逢えた者がどんなに幸せだったろうか。

 ああ、神は遍く人々に平等に幸福を与え賜う、なんて普遍的なものなんだ!

 
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