君ニ恋シテル
私達はしばらく屋台をまわって楽しんだ。


「やべー、食べ過ぎた!」

逞くんが苦しそうにお腹をさする。

私もちょっと食べ過ぎちゃったかも…。
これからキスシーンを見るっていうのに、ちゃっかりお祭り楽しんじゃってるし。


でも…てっちゃんと一緒にお祭りまわれたら、もっと楽しかっただろうな。

そういえば、Boy★2のコンサートの日もお祭りやってたっけ。

あの時はてっちゃん達と友達になるなんて、想像もしてなかった。

そんな前のことじゃないのに、こんなにも懐かしく感じる。


まわりを見ると、賑やかなみんなの笑顔と笑い声。眺めていると、生温い風が私の頬を掠めた。


やっぱり寂しい…。
さっきからずっと寂しいのは…てっちゃんがこの場にいないから。

今日が撮影じゃなかったらよかったのに。

一緒に来たかったな…。

そして、さっきの逞くんと沙弓ちゃん、洋祐くんと亜紀ちゃんみたいに手繋いじゃったり…なんて。


って、何考えてるんだろう私…!恥ずかしい…!

大体にして付き合ってもいないのに、手繋ぐなんてないから!

もうっ!バカバカ!


「優奈ちゃん、大丈夫?」

「わっ!えっ…あっ、沙弓ちゃん。だ、大丈夫だよ!」

いけない、つい自分の世界に…。


「よかった。顔が赤いから、熱中症とかだったら大変だと思って」

沙弓ちゃんはそう言って優しく微笑んだ。

心配してくれたんだ。
沙弓ちゃん…優しいな。


真剣に心配してくれてる沙弓ちゃんに、まさかてっちゃんと手を繋ぐ妄想してたなんて、恥ずかしくて絶対言えないよ…。


「次は焼きそば食べるか!」

「逞まだ食べる気!?」

「マジかよ!」

「山本くん、もうおやめなさいな!」

逞くんの言葉に、亜紀ちゃん、洋祐くん、百合香ちゃんが驚きの声を上げる。


「逞くん、凄いね」

私がそう呟くと、沙弓ちゃんがクスクスと笑ってこう言った。


「ふふっ、多分…楽しくて仕方ないんだと思う」

沙弓ちゃんは優しい目で逞くんを見つめる。


「私もね、今日凄く楽しい」

優しい笑顔を浮かべる沙弓ちゃんに、心がじんわりと温かくなった。



そして…


夏祭りの夜はどんどん更けていき、花火の時間が近づいていた。

そろそろ撮影が始まる。

いよいよだ…。

私達は撮影場所へと急いだ。
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