君ニ恋シテル
夏の夜空を鮮やかに彩る花火が、てっちゃんと西村陽花を照らす。

空に舞う花火は、まるで2人を祝福しているかのよう。

花火が上がるたび、私の胸は締め付けられた。


そして次の瞬間…


「好きだっ」


てっちゃんの声が辺り一面に響き渡る。



胸が、痛い…。
ただのセリフだとわかっているのに。
痛くてたまらない…。


西村陽花は潤んだ瞳でこう言った。

「私も…ずっと好きだった」

てっちゃんが西村陽花を抱き締める。


そして、2人は顔を近づけ…



え………。



今、何が起きてるの?




頭が真っ白になった。


目の前には唇をしっかりと重ね合う2人の姿。


私は目をそらすこともできず、ただただ無心で見つめていた。


「カット!!最高!よかったよー!」

監督の声がかかり2人が離れる。


照れくさそうにてっちゃんを見つめる西村陽花。


「あっれー?おかしいな…。ほんとにキスしちゃってた?」

逞くんは不思議そうに頭をかく。


「…許せない」

百合香ちゃんは眉間にシワを寄せ、怒りで声を震わせている。


「西村陽花が無理矢理キスしたのよ!ねえ渡辺さんあなたも見てたでしょ!?」

興奮して亜紀ちゃんに詰め寄る百合香ちゃん。


「お、小沢ちゃん落ち着いて!でも私も思った!徹平が顔近づけた時、西村陽花が更に顔近づけたのわかったもん。ねっ、優奈」

「えっ…私は全く気付かなかった」

「えー、さゆも洋祐もそう思ったでしょ?」

亜紀ちゃんがそう言うと、2人は頷いた。


「マジ!?よしっ、ちょっと徹平と話しに行こうぜ」

「逞ダメだよ!」

沙弓ちゃんが止めるも、逞くんはいつもの調子で大丈夫と笑い歩き始めた。
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