君ニ恋シテル
「西村さん、相変わらずだなぁ」

さっきまで大人しくしていた逞くんが急に口を開いた。


「逞、もう行こう。バレたらヤバイって」

沙弓ちゃんが焦ったように言う。


「わかってるって、もう少し…。あっ、やべっ!浩ちゃんだ!じゃあな徹平!!」

浩ちゃんの姿を見つけた逞くんは大急ぎで走り出す。


そしてすれ違いざまに、

「バイバイ浩ちゃん!」

と、手を振った。


浩ちゃんは逞くんだと全く気付いていない様子だ。

そんな逞くんにヒヤヒヤしながら、私達は浩ちゃんにバレないように、足早にその場を後にした。


結局、てっちゃんとは一言も話せなかった。

それどころか、目も合わせられずに終わってしまった。



ーーー…

ーー…


「西村陽花凄かったねー。みんないる前で普通あんなこと言う?キスしちゃったねなんて…」

亜紀ちゃんがそう言うと、

「あれはワザとに決まっているわ!私達に見せつけて…ほんっとあの女気にくわない!」

百合香ちゃんが鼻息を荒くする。


私はその会話をただぼんやりと聞いていた。


二人のキスする姿が、目に焼き付いて消えない。

涙を堪えるのに必死だった。




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