君ニ恋シテル
ーーー…
ーー…

「あーっ!また失敗…」

これでもう何回目だろう。
周りの子供たちが続々とゲットしていく中、私だけが取り残されていた。

もう自分が嫌になる。
どんだけ不器用なんだろう…。

時間の流れも忘れ、夢中になっていた。


よしっ!もう一回…と、挑戦しようとしたその時、

「優奈ちゃん」

後ろから、声が聞こえた。

手の動きがぴたりと止まる。
この声は…てっちゃん?


振り向くと、予想通り。
そこにはてっちゃんの姿があった。


「…」

何か言おうと思うも、その想いとは裏腹に何の言葉も出てこない。


「ここにいたんだ、探したんだよ。気付いたら優奈ちゃんの姿がなかったから…」

「あっ…」

そういえば私、みんなに何にも声かけてなかった…。


「ご、ごめんね。みんなも心配してたよね…」

「いや、みんな優奈ちゃんいなくなったのに気づいてなくて…俺も今勝手に抜けてきたんだ」

「そっ、そうなんだ」

気付いてないって、存在感ないなぁ私…そんなことを思いつつ、私はてっちゃんから目をそらし、目の前の水風船を見つめた。


でも、てっちゃんは気付いてくれたんだ…。
一番最初に気付いてくれて、今こうやって私を探しに来てくれた。

とても、嬉しい…。


「水風船、とろうとしてたんだ?」

「…うん。でも何回挑戦しても全然ダメで…もう諦めようと思ってたところだよ」

「どの色が欲しいの?」

「えっ…」

「とれるかわからないけど、やってみる」

そう言って、私のすぐ横にしゃがみこみ、笑顔でこちらを見るてっちゃん。

胸が、キュンとなった。
その距離の近さに、目眩がする。


「ピンクのが、欲しいなって思って…」

ドキドキしながら絞り出すように言うと、わかったと言いてっちゃんは水風船に目を向けた。


視線がそれてほっと安心するも、それをいいことに、私はてっちゃんの横顔を見つめてしまう。

自分に視線が向いてない時は見ていられるから…見ていたい。


かっこいいな…。
もう何度も思ってることだけど、てっちゃんは全部がかっこいい。

…綺麗な横顔。


私はそのままてっちゃんの手に視線を向けた。
指先までも、綺麗。しなやかだけど骨っぽくて、ちゃんと男の人の手だ。


見てるだけで、こんなにドキドキしちゃう。
見てるだけで、こんなにも頬が熱い。


トクトクと、心音が高鳴る。

ちょっと、どうかしてる…。
どうかしてるよね…。
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