君ニ恋シテル
「おーい、小沢ちゃんどうしたの?眉間のシワがいつもの何倍にもなってるよー?」

「……渡辺さん、あなたほんと素で失礼よね」

ギロリと睨みをきかせ嫌味を込めて言ったにも関わらず、きょとんとして全く動じない渡辺さん。


その姿に更に苛立ちを覚えるも、すぐにその感情は怒りから呆れに変わった。

前から思っていたけど、渡辺さんって天然なのかしら?それともワザと?


「小沢ちゃん、あっちに美味しそうな唐揚げ串売ってるみたいだよ!行こう!」

と、向こう側を指差す渡辺さん。

そんな脳天気な姿に、はぁーっと一つため息をつく。

まあ、どっちでもいいけど…。


「ってか優奈ちゃんと徹平ほんとどこ行ったんだろうな?」

瀬川くんの声に、私はゆっくりとまた2人がいた方向に視線を向けた。

そこにはまだ2人の姿があった。
やっぱり…手は繋がれたまま。



「……どうだっていいじゃない」

「「えっ?」」

渡辺さんと瀬川くん、揃ってマヌケな声を出す。


「渡辺さん!早く唐揚げ串食べましょう!ほらっ、瀬川くんもボケッとしてないで!行くわよっ!」

もうやけよ!
やけ食いして、お祭り目一杯楽しむわ!
私は勢いよく歩き出した。


「わっ!ちょっと待ってよ!小沢ちゃん!」



絶対に、後ろを振り向かなかった。
…振り向きたくなかった。

2人の姿をこれ以上見ていたら、きっと私、普通じゃいられなくなってしまう…。




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