君ニ恋シテル
* * *
「…出ない」
そう言って、携帯を耳から話すてっちゃん。
「鳴ってるの気付かなかったのかな?」
「そうかも」
「「…」」
…と、そのままなんとなくお互い無言になる。
周りはざわついていて騒がしいはずなのに、二人でいるこの空間だけはとても静かな気がするのはなぜかな…?
っ、何か話さなきゃ…!
例え数秒間であっても無言はキツイ…。
「あのっ…」
と、口を開いた瞬間…どこからかぐぅーっと音が鳴った。
ん?
思わずてっちゃんと顔を見合わせる。
この音は………?
…っ!!
もしかして…もしかしなくても、お腹の音?
は、恥ずかしいー…!
かぁーっと一気に顔が熱くなり、咄嗟にてっちゃんから目をそらす。
もう最悪っ…!
なんでこのタイミングで鳴るかなぁ…。
確かにお腹はすいてたかもしれないけど、何も今鳴らなくても…。
てっちゃんの前でこんな…恥ずかしすぎる。
どうしたらいいかわからず、下を向いていると…
「何か食べよっか?」
「えっ…」
ゆっくりと、顔を上げる。
すると、ニコリと微笑むてっちゃん。
「俺もお腹ペコペコ。行こっ」
と、そのまま手を引かれた。
「…えっ!?あのっ…」
て…手繋いじゃってるんですけどっ!
頭はパニック状態。わけがわからぬまま歩き出した。