君ニ恋シテル
子供みたいに、手を引かれてる。

少し前を歩くてっちゃんに、必死でついていく。

繋がれた手が熱い。
後ろ姿を見ているのすら、精一杯。

なぜ、こんなことになったのか…。
お腹が鳴って恥ずかしかったはずなのに、今はそんなことより手に意識が集中してる。

嬉しいのに、恥ずかしくて…手を離したくなる。
だけど、そんなことは絶対しないって、心ではわかってるんだ。本当の想いは、ずっとこのままでいたい…だから。


…と、急にてっちゃんの足が止まった。
それと同時に私の足も止まる。

「何食べよっか?」

こちらを振り向くてっちゃん。


「…なっ、何がいいかなぁ?」

ドキドキして、上手く話せない。
というか、手…繋いだままなんですけど。
この状態じゃ、何も考えられないよ…。


「迷っちゃうよね」

「…うん。そうだね、迷う…」

視線を合わせないまま、返事をする。
どうしたらいいの…?
とにかく、手が気になってしまう…。
いつまで、このままなのかな…?


てっちゃんを見ると、屋台に視線を巡らせている。

その横顔に、ついついまた私は見とれてしまうんだ…。


凄く、好き。
大好きだなぁ…。

なぜか無性に『好き』が溢れてきた。

本当に、大好き。


なんでこんなに、大好きなのかな?

胸がきゅうってなって、苦しい。無意識に、繋いだ手に力が入った。


すると、てっちゃんと視線が重なり、ドキッと胸が震える。


あっ…私、何やってるんだろう。
てっちゃんの手、握り締めちゃった…。


不思議そうに私を見るてっちゃん。

…っ。
たえきれず視線をそらす。


もうっ、私何やってるんだろう…。
恥ずかしくて、俯くことしかできない。


すると、てっちゃんが口を開いた。

「たこ焼き食べよっか?」

たこ焼き…?
ゆっくりと顔を上げると、笑顔でたこ焼きの屋台を指差すてっちゃん。


「…いいね!食べたいなっ」

頑張って普通に答えたつもりが、さっきのこともあり、ちょっとぎこちない喋りになってしまった。

うわぁ…なんかもうさっきからボロボロだ。


「じゃあ、買いに行こっか」

と、眩しい笑顔を浮かべるてっちゃんに、私は照れながら頷いた。

恥ずかしくて、真っ直ぐ見れないよ…。


そして…歩き出した次の瞬間。

えっ…?


ぎゅっと、手を握り返された。

びっくりして思わずてっちゃんを見るも、視線は合わない。



…………。



…もう、何も考えられないよ。
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