君ニ恋シテル

◇◇◇

「優奈まだぁ?」

「んー…ちょっと待ってぇ」

亜紀ちゃんが待ちくたびれた声で言う。


「ゆうにゃんは優柔不断なのね」

「だってぇ…」

百合香ちゃんの言葉に、私は弱々しく答える。


そう簡単に決まらないよぉ…。
大事なてっちゃんの誕生日プレゼントだもん。


今私達は、てっちゃんの誕生日プレゼントを買いにお店をまわっていた。


すでに二人はプレゼントを購入済み。
百合香ちゃんは高級な入浴剤、亜紀ちゃんはお菓子を購入していた。

決まってないのは私だけ。
…一体何をあげたら喜んでくれるんだろう?

店内を歩き回っては、頭を悩ませていた。


ストラップ?時計?財布?洋服?
んー、わかんないよー!


「優奈、私と小沢ちゃんちょっとここで座って待ってるね」

「あっ、うん!ごめんねっ…すぐ決めるから」

亜紀ちゃんは笑っているけど、百合香ちゃんは若干不機嫌な顔つきに…。

うっ…。
ヤバイ…早いとこ決めないと。
どうしよう…ほんと決まらないよぉ。


私は悩みながら、可愛らしいぬいぐるみなどが沢山並ぶお店に足を踏み入れた。


すると…

近くにいたカップルの会話がふと耳に入る。


「あー、これ可愛い!テディベア!ねえ、ペアで買わない?」

彼女が嬉しそうに手に持ったのは、可愛らしいテディベアのぬいぐるみだった。

洋服を着ていたり、リボンを付けていたりと、様々な種類のテディベアが並んでいる。


「いいよ。じゃあ…女の子のほうのテディベアは俺が持つよ」

「ふふっ、じゃあ男の子のほうのテディベアは私が持って…」

わっ…いいなぁ。
つまり、女の子のテディベアは彼女で、男の子のテディベアは彼氏ってことだよね。

テディベアをお互いに見立てて持つ…いいなぁ。


選び終わると、カップルは二人仲良くレジへと向かって行った。


私は棚の前に行き、テディベアを抱き上げる。

可愛いー…。

この男の子のテディベアはてっちゃんで…こっちの女の子のほうは私。


…なーんて!

思わず妄想してしまって、顔が熱くなる。


って、何考えてるんだろ…。
カップルでもないのに、これはあげられないよね…。

そう思いながらも、私はテディベアの棚から離れることができずにいた。




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