君ニ恋シテル
ーーー…
ーー…


ゆかりの地ツアーが終わり、宿泊先の温泉旅館へ到着。

私達はさっそく温泉を満喫していた。


「はぁー、気持ちいいー!」

亜紀ちゃんがそう言うと、

「ほんとね、やっぱり温泉はいいわ」

百合香ちゃんがちゃぷんと肩にお湯をかけながら答える。


ほんと癒される…。
ウトウトなっちゃうよ。
寝てしまいそう…。


「ゆうにゃん!!」

「わあぁっ!」

び、びっくりしたぁ…。

百合香ちゃんの大きな声に、一気に眠気が覚める。

温泉内での大声はよく響く。

周りのファンの子達の視線が集中するも、そんなことは全く気にもとめない百合香ちゃん。


「あはは!優奈、寝てたでしょー?」

だって、眠くなるんだもん…。


「気が緩んでいる証拠よ。告白大作戦の時間が近付いているというのに…」

百合香ちゃんは声のトーンを落とした。


「ゆ、百合香ちゃん…ほんとにやるの?」

「やるわよ、そう決めていたでしょ」

「でも…」

無理だよって言っても、百合香ちゃんが聞かないことはわかってる。

だから、その後の言葉が続かなかった。


「百合香ちゃん、作戦ってどんな風にするの?」

「ゆうにゃんは何も気にしなくていいわ。本番は、今日のスケジュールが全て終了した夜よ」

ピシャリと言い切る百合香ちゃん。

亜紀ちゃんはやっぱり口を挟むことなく黙りこんでいる。


何も気にしなくていいって言われても…。

はぁ…どうしよう。

ぱしゃっと顔にお湯をかける。


なんでこんなことになっちゃったのか…。

百合香ちゃん、どうして急に告白大作戦なんてやろうと思ったんだろう…。

告白どころか、今日はてっちゃんと一言も話せてないっていうのに。

目が合っても恥ずかしくてそらしちゃったし…。

しかもあんな大袈裟に…。

ううー…。
色々考えてたら熱くなってきた。

ヤバイ…のぼせそう。


「優奈!顔真っ赤だよ!?」

「えっ…嘘…なんか、ぼーっとする……」

「ゆうにゃん!!」





.
< 522 / 679 >

この作品をシェア

pagetop