君ニ恋シテル
…やっぱり私も今渡さなきゃダメだよ。

2人が渡してるのに、私だけ渡さないなんておかしいし…。


立ち上がり、部屋に向かおうとすると…

「ダメよ!」

ガシッと強い力で腕を掴まれた。
振り向くと、そこには百合香ちゃんの姿。
私の手をしっかりと握りしめている。

い、いつの間に…。


てっちゃんの元から走って戻ってきた亜紀ちゃんが、何事かと私と百合香ちゃんを交互に見る。


「ゆ、百合香ちゃん離して。私も今渡したいの」

「ダメ!!ゆうにゃんはこの後、2人の時に渡しなさいな」

「えっ!!」

2人の時!?


「最初からその予定よ」

そ、その予定よって聞いてないよー!


「ゆうにゃん驚きすぎよ。告白するんだから、2人っきりになるのは当たり前でしょ。その時に一緒にプレゼントを渡すのよ」

そ、そっか…そうだよね。
だから告白大作戦…。

って、だから私告白できないって…!


「宴もたけなわですが、そろそろお開きでーす!これから外で花火やるので移動しまーす!」

浩ちゃんの声が宴会場に響き渡る。


「えー、もうそんな時間ー?」

さっきまで黙って私と百合香ちゃんの会話を聞いていた亜紀ちゃんが、驚きの声を上げる。


チラリとステージの方を見ると、てっちゃんはさっきファンの子達から貰ったプレゼントを両手いっぱいに抱えていた。

そんなてっちゃんを逞くんが羨ましそうに見つめている。

私も今渡したかったよぉー…。


「さっ、外に移動しましょ」

「花火、花火ー!」

百合香ちゃんに促され、私達は歩き出す。

亜紀ちゃんは花火がよっぽど楽しみなのか、子供みたいにぴょんぴょん飛び跳ねはしゃいでいる。


はぁー…。
どうしよう…。

花火は楽しみだけど、気持ちが浮かないよぉ…。
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