君ニ恋シテル
ーーー…
ーー…


「告白大作戦、実行の時間よ」

そう言って、百合香ちゃんが立ち上がった。


花火が終わり、部屋に戻ってきた私達。
今日の旅行スケジュールは全て終了した。


和やかで落ち着きのある和室に緊張が走る。

ついにきたよ…。
でも、告白する覚悟なんてこれっぽっちもできていない。

てっちゃんに告白する自分を想像してみた。


………。


む、無理っ!
絶対無理ー!

どうしよう…。
でも…プレゼントは渡したいし。

うぅー…。


「じゃあ行ってくるわ」

「へっ?」

百合香ちゃんは突然そう言うと、部屋の扉に手をかけた。


「小沢ちゃん待って!行くってどこに?」

亜紀ちゃんが慌てて百合香ちゃんを呼び止める。


「どこって…徹平くんの部屋に決まってるじゃない。呼び出してくるわ。呼び出しに成功したら、ゆうにゃんにすぐに連絡するから、あとはゆうにゃんが告白に相応しい場所に徹平くんを連れていって告白すればいいだけよ。それが告白大作戦よ」

淡々と話す百合香ちゃんを、私と亜紀ちゃんはポカンとして見つめる。

これが…告白大作戦?


「でも、部屋に行くってどうやって?部屋の場所だってわからないのに…普通に電話かメールで呼び出せば…」

「ダメよ!!」

百合香ちゃんの大きな声が亜紀ちゃんの言葉を遮る。


「…電話やメールだと気付かない場合だってあるわ。だから直接行って呼び出したほうが確実じゃない」

「百合香ちゃん、でも…スタッフの人とか見張ってるかもしれないし…」

私の言葉に、亜紀ちゃんもうんうんと頷く。


百合香ちゃんは私と亜紀ちゃんの目を真っ直ぐ見つめたまま黙りこむ。

揺るぎのない、強い眼差し。



「…行ってくるわ」

「百合香ちゃ…!」

「小沢ちゃん!」

私達の声を振り払うかのように、百合香ちゃんは勢いよく部屋から飛び出した。

行っちゃった…。


「百合香ちゃん、大丈夫かな?」

「多分…」

どうなっちゃうんだろう…。


複雑な想いが胸を渦巻く。

不安に思いつつも、私と亜紀ちゃんは百合香ちゃんの連絡を大人しく待つことにした。
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