君ニ恋シテル
◇◇◇
百合香はエレベーターで最上階を目指していた。
部屋の予想は大体ついているわ。
最上階の一番良い部屋に決まっているもの。
緊張するわね…。
エレベーターの数字が上がるごとに、ドキドキも増す。
…徹平くん、プレゼント喜んでくれたかしら。
高級な入浴剤、あれは疲れがとれるはずだし、ローズの香りで優雅なバスタイムが過ごせるはずだわ。太鼓判よ。
そんなことを考えているうちに、エレベーターはあっという間に最上階へ到着。
さて…ここからね。
慎重に行かないと…。
曲がり角からチラッと向こう側の通路を覗く。
やっぱり…。
スタッフがいるわ。
あの部屋に徹平くんがいる証拠ね。
徹平くん、今部屋の中にいるのかしら?
偶然この辺を歩いてくれて、会えれば嬉しいのだけど。
…そんな都合が良いこと、やっぱりあるわけないわよね。
「ちょっと君、ここで何してるの?」
突然の背後からの声に、ビクンと肩が跳ね上がる。
「わっ、私は怪しいものではありません!」
咄嗟に振り向きながらそう言うと…
「じゃあなんでここにいるんだ?」
そこには浩ちゃんがいた。
ヤバイわ…。
私のこと、絶対怪しいって顔で見てる。
「わ、私は…決して徹平くんの部屋を探しに来たわけじゃ…はっ!」
私、何を言っているの!
あぁ最悪だわ!
私がこんなヘマをするなんて…!!
何故かきょとんとしている浩ちゃん。
なによ…なんなのその顔は。
どうせバカな奴って思っているんでしょ…。
笑えばいいじゃない。
笑われることには慣れてるもの。
さあ、早く…
次の瞬間、フワッと優しいものが頭に触れた。
「悪いな。残念ながら徹平に会うことはできない」
なっ…!
…っ!!
「うわっ!」
気付いたら、浩ちゃんの手を思いっきり振り払っていた。
心臓がバクバクする…。
「…あっ」
「はは、中々きいたよ。あー、ヒリヒリする」
浩ちゃんはそう言いながら、手に息を吹きかける。
初めて男の人に触れられた。
頭を撫でられた。
初めての…感覚。