君ニ恋シテル
「もう何人目かなぁ?みんな部屋探しに来てんの。で、俺に見つかっちゃう」

ニコニコしながら話す浩ちゃん。


「まあ、俺に会いに来た子もいるんだけど。でも困るんだよなぁー」

…そうだわ、浩ちゃんは女ったらしだった。


こんな人に初めて頭を撫でられたなんて…。

そう思ったら急に腹が立ってきて、心臓のバクバクはすぐにおさまり、反対に怒りがわいてきた。


「私、戻ります」

「ん?あぁ…あっ、ちなみに徹平と逞は一緒の部屋なんだよ」

「はい?」

それがなんだっていうのよ。


「プチ情報ー!別々の部屋だと思ってたでしょ?」

ヘラヘラ笑って…何がそんなに楽しいの?

いちいちムカツクわね…。
やっぱりこの人好きになれない。
嫌いだわ。

女ったらしって時点で大嫌いだけど。
マネージャーとしての立場がなってないわよ。

私は浩ちゃんを無視して歩き出した。


「ああー!ちょっと待って待って!」

その声に、ピタッと足を止め振り返る。
なによ、まだ何かあるの?
話しかけないでよ!


「…なんですか!?」

イライラして、つい口調が荒くなる。


「君さ、ハートモールのイベントの時いたよね?」

…何を言ってるのこの人は。


「いましたけど…それが何か?」

「ああ!やっぱりそうだ!なんか見覚えあるなぁってずっと思ってたんだよ。あの時転んだ子だよね?徹平に助けてもらってたよな!印象に残ってる」

途端、頭に血が上った。

この人は私を怒らせたいのかしら?
あの時私はどれだけ恥ずかしい思いをしたと思っているの…!

それが印象に残ってるですって!?
失礼にもほどがあるわ!

私は浩ちゃんを睨み付けた。


「あっ…ごめんごめん。そんなに怒らないで、悪気はないんだ」

悪気はない…?
もう限界だわ。
早くこの場から立ち去りたい。

私は浩ちゃんから顔を背け、歩き出した。


「明日も…!」

はい?
その声に足を止めるも、今度は振り返らない。

顔も見たくない。


そのまま黙っていると…

「明日も旅行楽しんでな」

!?
何かと思えばそんなこと!?
ほんとになんなのよこの人は!

思わず振り向くと、浩ちゃんは笑顔で手を振っていた。


「…っ!」

嫌い!大嫌い!
今までより、もっと大嫌いになったわ!
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