君ニ恋シテル

◇◇◇

「優奈、ソワソワし過ぎ」

「だって…」

百合香ちゃんが出ていってから数十分が経った。


連絡はまだない。
さっきからずっと携帯とにらめっこしている。

百合香ちゃん、部屋わかったかな?
ちゃんとてっちゃんと会えたのかな?

落ち着かないよー…。
携帯片手に部屋の中を行ったり来たり。


緊張でずっと胸がドキドキしてる。
プレゼント喜んでもらえるかな…。
ちゃんと渡せるかな。

告白は…。
ダメだ、考えれない。
考えただけで一気に鼓動が早くなる…。


「はぁー…」

思わず大きなため息をついた次の瞬間、


ガラッ!!


部屋の扉が勢いよく開いた。


「はぁっ、はぁっ…」

「百合香ちゃん!」

「小沢ちゃん!」

私と亜紀ちゃん、同時に声を上げる。


倒れこむように部屋に入る百合香ちゃん。


「ちょっと小沢ちゃんどうしたの!?」

「百合香ちゃん大丈夫!?」

「…え、ええ」

百合香ちゃん…こんなに慌てて戻ってくるなんて…。


百合香ちゃんは呼吸をととのえると、ゆっくりと口を開いた。


「ゆうにゃん、ごめんなさい。浩ちゃんに見つかっちゃったわ」

私と亜紀ちゃんは顔を見合わせる。


予想はしてたけど…やっぱり見つかっちゃったんだ。


「はぁ…喉がからから。自販機で何か買ってこようかしら。あなた達も一緒に買いにいかない?」

「いいけど…それより小沢ちゃん、浩ちゃんには怒られなかったの?」

立ち上がる百合香ちゃんに向かって、亜紀ちゃんが言う。

そうだよ…私もそれ気になってた。


「…怒られていないわ。さっ、早く行きましょう」

素っ気なくそう言うと、百合香ちゃんは部屋の扉を開け歩き出す。

私と亜紀ちゃんは慌て立ち上がり、百合香ちゃんを追いかけた。



自販機に向かって歩きながら、私は内心ホッとしていた。

百合香ちゃんが怒られていなくてよかったということと、作戦が失敗に終わってよかったということの2つで…。

さすがにもうこの作戦は諦めたよね…。

百合香ちゃんには悪いけど、やっぱり私にはまだ告白は無理だ。

プレゼントは明日普通に渡せればいい。

それに…百合香ちゃんにももうこんな危険なことしてほしくないし…。
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