君ニ恋シテル
「おーい!どうした?大丈夫か?」

私はその声に悪口を言ってた子達から目を反らす。

人混みの中をかきわけやってきたのは浩ちゃんだった。

「浩ちゃん、ちょっと転んじゃった子がいて…でももう大丈夫だよね?」

「え、ええ。おかげさまで…」

てっちゃんの言葉に、その子は顔を真っ赤にして答えた。


「そうか、なんか様子がおかしいと思って…」

「浩ちゃん気付くの遅すぎ!
またファンの子達と話し込んでたでしょ?」

逞くんが笑いながら、浩ちゃんに向かって声をかける。


浩ちゃんは一瞬バツが悪そうな顔をした。

「…ごほんっ。あー、とにかく、握手会再開ー!」

浩ちゃんがそう言うと、また場は騒がしさを取り戻す。


「じゃあ気を付けて帰ってね」

「は、はいっ…!」

転んだ子にそう声をかけると、てっちゃんは元の位置に戻った。


「浩ちゃーん」
「なんだ、なんだー?」

浩ちゃんはまた他のファンの子に捕まり、人混みの中へと消えていった。
< 59 / 679 >

この作品をシェア

pagetop