君ニ恋シテル

* * *

あっ!あいつまた徹平に近付いてやがるっ…!

ちょっと目を離すとすぐこれだ。

西村陽花と徹平が話してる姿が目に入ったとたん、俺は急いで徹平のもとへと戻った。


「徹平、飲み終わったか?さっさと次の仕事行くぞ」

「浩ちゃん。わかった、今ちょうど飲み終わったところ」

すると、あからさまに嫌そうな顔で俺を見る西村陽花。


と、俺から視線をそらすと徹平のほうを向き、

「徹平くん、お仕事頑張ってね!じゃあ、またね」

満面の笑みでそう言い、それからまた俺のほうを見て睨みつけると、その場から去っていった。

…ほんっと可愛げがないクソガキめ。
いちいち腹立つ態度とりやがって。



ーーー…
ーー…

車内。


信号待ち。ハンドルを握り締めながら、ミラー越しに、後部座席に座る徹平をチラリと見る。

あの旅行の日から、徹平は毎日あのネックレスをつけている。

…多分あれはきっと、百合香ちゃんから貰ったんだよな?

それしか考えられない。


「徹平…最近毎日そのネックレスつけてるけど、気に入ってるのか?」

「ん?うん、まあ」

「ふーん…」

プレゼントで貰ったのか?誰から?百合香ちゃんから?って、聞きたい!けど、聞けない…。

あー、徹平と百合香ちゃん。
二人はどういう関係なんだ…?
めちゃくちゃ気になる…!
思わずハンドルを握る手に力が入る。


「浩ちゃん」

「あ?」

「信号、青に変わったよ」

徹平がそう言うのと同時に、後ろの車がクラクションを鳴らした。

やべっ…!
慌てて車を走らせる。


「はあー、青になったの全然気づかなかった」

「あはは、浩ちゃんボーッとしてた?何か考え事?」

「…いや、別に」

お前のことで考え事してたんだよー!とは言えず…。


結局、これ以上ネックレスの話にふれることはできなかった。
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