君ニ恋シテル

* * *

「逞ー!」

浩ちゃんの声が耳に入り振り返る。


「おー、徹平お疲れー!ついでに浩ちゃんも!」

「おい、ついでってなんだよ!ついでって!」

「あははっ」

「ったく。収録は?どうだった?」

「バッチリー!いっぱい笑いとれたよ!」

「笑いってお前…」

「バラエティーには笑いが必須!」

「一応アイドルだってことも忘れるなよ?芸人じゃないんだからな?」

「わかってるってー」

「おっと、こうしちゃいられない。ほら、さっさと行くぞ」

そう言うと、浩ちゃんは足早に歩き出した。

これから雑誌の撮影。


浩ちゃんの後ろを歩きながら、隣を歩く徹平にチラリと視線を向ける。

徹平の首には優奈ちゃんから貰ったネックレス。

いつも付けてる。
よっぽど気に入ってるらしい。
というか、優奈ちゃんからのプレゼントだから…だよな。

ほんっと、優奈ちゃんのこと好きなんだなあー。
さっさと告ればいいのに。

と、徹平と目が合い、徹平が口を開いた。


「何?」

「ん?」

「さっきからずっとこっち見てるから」

「別にー」

「顔がニヤケてる」

そりゃニヤケるっしょ。
だって…


「それ」

「?」

俺は首元を指差した。
そして、口パクで優奈ちゃんの名前を言う。

ニッと笑ってみせると、徹平はふいっと目をそらした。

なんだよー、優奈ちゃんの名前出すとすぐこれだ。

つまんねーの。


もう一度、徹平の方を見ると…

えっ…?

「徹平…なんか顔赤くなってない?」

「なってない」

「なってるってー!ってか耳まで赤くなってるし!」

なんだよ、めっちゃ照れてんじゃん!


「ひゅー!」

可愛いやつー!


「逞うるさいっ…!」

「だって徹平可愛すぎ!」

「なんだなんだ?何騒いでんだ?」

浩ちゃんがクルッと振り返る。


「なんでもなーい」

俺がそう言うと、怪訝な表情を浮かべるもまた前を向く浩ちゃん。


ついつい大きい声を出してしまった。
だって楽しすぎるから。
徹平怒っちゃったかなー…?

様子を窺うように、徹平のほうを見た。

目が合う。
すぐそらす。

あ、やっぱ怒ってる。
やっべー。

ま、いっか。

と、また徹平のほうに視線を向けると…


ん?

…なーんだ。全然怒ってないじゃん。


横顔が、なんとなく嬉しそうに見えたのは、多分きっと、気のせいじゃないはず。




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