君ニ恋シテル
ーーー…
ーー…


「よーしお前ら、今日までよく頑張ってきた。最後まで全力でな!」

浩ちゃんが気合いの入った声で言う。

いよいよ今日はツアー最終日。


「あったり前じゃん!」

「頑張るよ」

逞と俺がそう言うと、満足そうにニッと笑う浩ちゃん。


「でも、ほんとあっという間だったよなあー。初日とかめっちゃ懐かしいんだけど」

「うんうん…って、逞お前はほんといつもだらしないよなあ。何寝っ転がってるんだよ。もうすぐ本番だってのに緊張感ないやつめ」

「いいじゃん別に。浩ちゃんも寝ればー?」

「遠慮しとく」


そんな2人の会話を聞きながら携帯を見ると、優奈ちゃんからメールが届いていた。


『いよいよ今日はツアー最終日だね!
応援してるよっ☆』

嬉しくて、自然と笑みがこぼれる。


「徹平、何ニヤニヤして携帯見てんのー?」

寝転がってた逞が急に起き上がって俺の携帯を覗き込もうとする。


「見るなって…別になんでもないから」

「ふーん……優奈ちゃんからメールきてたんじゃないの?」

小声でそう言うと、クスッと笑う逞。


「違っ…」

思わず大きな声で否定しそうになっていると、聞き耳をたててる様子の浩ちゃんの姿が目に入った。

すると、そのことに逞も気付いたのか、それ以上話すのをやめた。


浩ちゃんとは、この前の旅行でのこともあるし、なんとなく気まずい。

俺が勝手に気にしてるだけかもしれないけど…何かを感づかれてる気がしてならない。



優奈ちゃんにメールを返し終わると、もうすぐ本番の時間。

「よしっ!頑張ってこい!」

浩ちゃんの声に俺と逞は笑顔で答えると、ファンの子達が待つステージに向かった。


いつもつけてる優奈ちゃんからもらったネックレス。

もちろん今日もつけてる。

ギュッと握りしめると、勇気が湧いてきた。



長いようで短かった夏。
一生に一度の夏が、通り過ぎて行く。



ーーー今年の夏が、終わる。
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