君ニ恋シテル
「はあ…ほんと困った奴だなあいつも」

やれやれといった感じに頭をかく浩ちゃん。


「嫌な思いさせちまって悪かったな」

「い、いえ!私は全然大丈夫ですわ!むしろ私のせいで徹平くんに迷惑をかけてしまって…」

もごもごと話す 百合香ちゃん。
何を言っているのかよく聞こえない。
なんとなく、顔が赤いのは気のせいだろうか?


「でわ、私は戻りますね!」

そう言うと、そそくさと私達がいる場所へと百合香ちゃんが戻ってきた。


「小沢ちゃんおかえり!めっちゃ修羅場だったね!」

「あなたなんでそんなに楽しそうなのよ。ほんとどうなることかと思ったわよ」

百合香ちゃん、落ち着いてるように見えたけど、内心結構焦ってたんだ。


「浩ちゃんが来てくれて良かったね!」

「ええ…そうね。たまにはあの人も役に立つのね」

「小沢ちゃん、浩ちゃんに失礼」

2人が話すのをよそに、私はまだその場に残るてっちゃんと浩ちゃんの様子をそっと伺っていた。


「浩ちゃんありがとう。助かったよ」

「いや、いいってことよ。まあ、あれだ…うまくやれよ」

「…あの子とは別に何も」

「いいんだ!いいんだ!それ以上何も言うな!ちゃんとわかってるから。な?」

なんか…浩ちゃんも勘違いしちゃってる…?


「ふふ…なんだかおかしなことになっちゃったわね。私と徹平くんがそんな…ぐふふ」

「小沢ちゃんめっちゃ鼻息荒いよ」

「うるさいわねっ!」

「しっ!二人とも聞こえちゃう」

もしかして気付かれた…?なんて思い冷や冷やしていたけど、そんなことはなかったみたいで、普通に会話を続ける浩ちゃんとてっちゃん。


「お前は真面目すぎる。逞を見てみろ。わかるだろ?めちゃくちゃ自由に生きてる。徹平ももっと自分に正直に素直に生きろ」

「自分に正直に、素直に…?」

てっちゃんがそう言うと、力強く頷く浩ちゃん。


「よしっ、戻るぞ!みんな心配してたんだからな?早く戻らないと」

浩ちゃんがスタスタと歩き出すと、遅れててっちゃんも一歩足を踏み出す。


と、歩き出す前にくるっとこちらを振り向くてっちゃん。

…っ!


ばっちりと目が合う。
ビックリして、咄嗟に視線をそらそうとするも、なぜかそらすことができない。
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