君ニ恋シテル
マンションの外に出ると、冷たい風が体に吹き付ける。

「寒いね」

軽く微笑みながらそう言うてっちゃんに、私は小さく頷くことしかできなくて…。

寒いけど…今の私には調度いいかもしれない。
火照った頬を冷ましてくれるから。


歩きながら空を見上げると、真っ暗な空にお月様がぽっかり浮かんでいた。
柔らかな光に、見とれそうになる。


しんと静まりかえった夜道。
時々遠くから車の走る音が聞こえるくらいで、後はほとんど音がしない。


………。


どうしよう…さっきからずっと無言だ。
いつもならもっと普通に話せるのに。
やっぱりこの前のことがあったせいか、どうしても気まずい。
てっちゃんからも、何も話してこないし…。


そのまましばらく歩いていると、ふいに私とてっちゃんの指が微かに触れた。


…!


ビックリ、したぁ…。
触れたのはほんの一瞬なのだけど、ありえないくらい鼓動が速い…。

ドキドキしながらてっちゃんの方を見ると、目が合った。

…っ。

少しはにかむように笑うてっちゃん。
その笑顔に、胸が震える。

恥ずかしくて、私も照れ笑いを返すことしかできなかった。


とっても幸せな気持ちで、寒さなんてあっという間にどこかへ消えてしまうくらいに、あったかい。

その後も特に会話は交わさなかったけど、最初の気まずさはほとんどなくなっていた。


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