君ニ恋シテル
と、そこでまた会話が途切れてしまった。
本当はもっといっぱい話したいのに、どうしてこんなにも何も言葉が出てこないのだろう。

もどかしくて、 胸がギュッと締め付けられた。


「優奈ちゃん、ほんとにこのお酒好きなんだね。ピーチの。俺もだけど」

「うん…!好きだよー。お気に入り」

思いがけず、てっちゃんの方から話しかけてくれた。嬉しい。


「この前もね、家で…ベランダで飲んで…なんか、流れ星見たときのこと思い出しちゃった」

「そうなの?俺もこの前逞とベランダで飲んで、その時のこと思い出してたよ。もしかして同じ日だったりして」

「そうなんだ!同じ日だったら凄いね!その日は確か…」

…っ。
そこで言葉が詰まる。
だってその日は、てっちゃんと西村陽花の熱愛報道があった日。
そのことに気付いたとたん、言葉が出なくなってしまった。

急に黙り込む私を不思議そうに見つめるてっちゃん。


「えっとね…その日は確か、えーっと…」

わぁ…言いづらいなぁ。
どうしよう。


「優奈ちゃん…?俺はその日は…」

一瞬てっちゃんの顔がハッとしたように見えた。

その表情を見て確信した。
多分きっと、同じ日なんだ。
熱愛報道があった日。そうに違いない。


「…熱愛報道があった日なんだけど」

「私もその日…偶然だね」

ほらやっぱり。ビンゴ。

同じ日に、同じことをしてて、同じことを思い出していた。
嬉しい…嬉しい偶然のはずなのに、どうしてこんな複雑な気持ちにならなければいけないのだろう。


「あの日、ほんとは優奈ちゃんに連絡しようとしてたんだ」

「え…」

「でも中々できなくて…」

「わ、私もねっ…てっちゃんに連絡しようって思って何回もメールの文章考えてたんだけど…送れなかったんだ」

「そうだったんだ。あの時はビックリさせちゃってごめんね…?次の日も打ち上げの時、カラオケで色々あって…」

「ううん…!」

確かにビックリはしたけど、ね…。
てっちゃんが西村陽花の告白を断るのを見て、すっきりできた。
すっきりというか、安心というか…とにかく結果的に良かったのだ。

でも、あの日てっちゃんも私に連絡しようとしてたんだ…。
そのことも知れて良かったな。
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