君ニ恋シテル
迷いながら一歩足を踏み出すと…

っ!!

足を滑らせてしまった。

ぐらりと体が傾き転びそうになる。


「危ない!」

次の瞬間、てっちゃんの声が聞こえて、腕が伸びてきて…。


そして気付いたら、私は床に倒れこんでいた。


「痛っ…」

「優奈ちゃん、大丈夫?」

「うん…」

答えながら、思わずつむってしまった目をゆっくりと開ける。


すると、


!!!


目の前にてっちゃんの顔があった。


っ!!
一気に全身が熱くなる。内心パニック状態。
体が石になったみたいに…ピクリとも動けない。


今の状況は、てっちゃんが私の上に覆いかぶさってる…!?



「…優奈ちゃん?」

「あ…だい、じょう、ぶ…」

緊張で声が思うように出ない。
震える…。

そっか…てっちゃんのおかげで、そんなに衝撃が少なくすんだんだね。


「よかった」

ほっとしたようにそう呟くと、てっちゃんは笑顔を見せた。


もう…どうなってもいい。
そんなふうに思った。
だって…思っちゃうよ。
こんなことになってるんだもん…。


てっちゃんはパッと起き上がると、私に手をかして起き上がるのを手伝ってくれた。

「床結構滑るから気を付けてね」

「うん…ごめんね」

「ううん。怪我しなくてよかったよ」

「ありがとう…てっちゃんのおかげだよ」

「どういたしまして。何か飲み物でも飲む?準備するから座ってて」

お言葉に甘えて、ソファーに腰を下ろす。


まだ…ドキドキして、ぼんやりしてる。
さっきの出来事があまりにも凄かったから。


すると、玄関が開く音がし、静かだった部屋が急にざわざわと騒がしくなる。

逞くんの部屋からみんな戻ってきたみたい。


「ほんと逞の部屋めっちゃ汚くてビックリした!」

「私もビックリよ。呆れちゃうわ」

「いやいやそんなじゃないっしょ?…あ!なんだ徹平帰って来てたんじゃん!」

亜紀ちゃんと百合香ちゃんと会話しながら部屋に入ってくると、逞くんがこちらに気付いた。


「ついさっきね」

「ふーん。もっと遅くなっても良かったんだぜ?」

またあんなこと言って…。
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