君ニ恋シテル
ーーー時間は流れ、映画はいよいよクライマックス。

愛し合う二人が抱き合って…キスを交わす。
感動で目が潤む。
泣きそう…。


と、次の瞬間。


えっ…?


てっちゃんの手が、私の手に重なっていた。
そっと、本当に軽くだけど。

…っ。
今度はさっきみたいな偶然じゃない。
どうしよう…ドキドキして動けない。

だけどなんだろう…優しくて、あったかい。


触れ合っていたのは、ほんの数秒。
それなのにまるで永遠のように感じた。


映画が終わり、明かりがつく。
恥ずかしくて、てっちゃんのほうを見れなかった。
どんな表情をしたらいいのか、わかんない…。

なんとなくてっちゃんも緊張しているのか…一度咳払いをしてから話しだした。


「映画…良かったね」

「うん、良かった…!感動した」

その後も、会話はぎこちなくて…上手く話せなかった。


映画館を出た後も、ほとんど上の空でふわふわしてて…。


頭に浮かぶのは、映画の内容よりも何よりも…てっちゃんがそっと手を重ねてきたこと。





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