神様のおとした白いリンゴ
「………終わったか?」
「へっ?」
夢の終わりはあまりにあっけない一言からだった。僕は駅のホームに生きたまま座り込んでいた。
「大丈夫か? さっきので頭でも打ったんじゃないのか?」
そうだった、電車にひかれかけて………生きてる?
そこで自分が誰かに抱擁されていることに気がついた。
とてもいい香のする女の子に。
「女の子に、だな」
「女の子強調すんなっ」
銀髪だが、整った日系の顔立ちに思わず緊張する。無言の彼女は、僕を抱きしめたまま動かない。
「そら、お礼言わねぇと」
「えっ?」
「その子がお前を助けてくれたんだぞ」
「この子……が…………」
僕は彼女の両手をほどいて、顔をみた。
やっぱり夢の少女だ。
「ありがとう………君は?」
「りんご…………」
「りんごちゃん?」
「食べたい………」
「へ?」
命の恩人に失礼だが、この子ってちょっと¨あれ¨なのかな………。
「で、名前は?」
「……………………」
「ない……とか? ははっ」
「ないと……思う」
ジョークかな? アメリカンジョーク的な。すごい流行だったりして。
「いや、それはないだろ」
「なにぶつぶつ言ってんだそら」
「なんでもない……」
「はやくしねぇと、もう遅刻確定だぞ」
いつの間にか次の電車が来る時間になっていた。遅刻は仕方ないので急ぐことにした。