神様のおとした白いリンゴ
「名前と学年とクラスは?」
綺麗な声が白いカーテンの向こう側から、ベッドの利用者名簿の記入欄にある項目を僕にきいた。
「3年C組の、藍花 空です」
「3の……C、あいばな……そら……っと、よし! 昼くらいまでゆっくりして、無理そうなら早退しなさい」
「わかりました」
目を閉じると冴えてきた眠気がまたやってきた。しかし、眠気に身を任せ意識を遠退かせると不安になる。
なぜだかわからないが、このまま自分が目覚めないような気がしてならない。
全身を襲う痛みと眠気、そして恐怖に苦しみながら、いつの間にか寝ついていた。
――雪が一面に降り積もる広い草原に僕は立っていた。
夢だろうか。
フワフワした感覚に、ほとんど思考が働かない。そらは暗い青で、どこまでも続く白い大地、白い雪の所々から枯れた草花が悲しそうに覗いている。
凍えるように寒いこの場所で、僕は、暖かさを求めさ迷っていた。
遠くに一輪の花を見つけた。花を囲むように、白色がよけていて青々とした草がはえていた。
異様な風景に描き足されたように、白い傘を持った銀髪の少女が花の隣に立って僕を見ていた。
極寒の大地の中で、白い肌をさらした薄いワンピースを着ている。顔は幼く、長いまつ毛と大きな黒い瞳がこちらを見つめ続けていた。
なにもかもがおかしな世界に、ぽつりと立つ少女。
僕は彼女に見とれていた。