神様のおとした白いリンゴ

保健室をでて、帰路にたった時には日は落ちていて、電灯の灯りの中でとぼとぼ歩いていた。

部活帰りの生徒も減っていて、少し肌寒い。

ぼーっと歩いていると、聞き慣れた声が元気よく僕を呼んだ。


「よぅ、そら!」

「真人か……」


彼は海渡 真人(うみわたり まさと)。
同じ電車で通学するようになってから、2年と少しを親友として仲良くしてきた奴だ。


「今日のそら君、元気ないね~?」


そして現れた、我が陸海空トリオを飾る三人目の風見 陸(かざみ りく)。おっとりした口調が特徴の優しい女の子だ。


「なんか全身だるくて」

「へ~、そらもサボり文句の一つも言えるようになったのか」

「いつも、真面目だもんね~」


茶化してくる二人に、反論する元気すら今は湧いてこない。


「あれ~? 本当におかしいね~」

「うむ、ここは一発気合いを入れてやらねばな!」


――――嫌な予感がしたので、全力でダッシュした。

「ハァハァ……、なんだ、元気じゃねーか」

「そっちこそ、部活あとにしては元気じゃない?」


真人は野球部に所属している。身長は高く筋肉質だ。
二人で息をあがらせていると、涼しい顔をしたりくが僕等を待っていた。


「二人とも遅いよ~」

「お前が速すぎなんだよ」

「さすが陸上部、部長だな!」

「えへへ~」


りくは、おっとりとした性格だが、いざ走りだすと風のように身軽に足を跳ねらせる。

人間見た目じゃないってことを体現したようなやつだ。
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