神様のおとした白いリンゴ
駅のホームで三人は電車を待っていた。
僕と真人は同じ電車で、りくは逆の電車だ。僕と真人は向かいのホームに立っているりくと話していた。
「そら君、さっきの空元気でしょ~?」
「ほんとか?」
女の子特有の鋭い感で、僕の状態を察したらしい。相変わらず真人は鈍感で、アホっぽい顔で僕を見ていた。
「なんとか大丈夫だから」
「みずくさいぞ親友!」
事実をのべても、信じなかったのは誰だったのか………。
「無理しないでね」
りくが珍しく、強い発声で僕を心配してくれた。とてもあたたかい気持ちになる。
「ありがとう」
「もしピンチになっても、陸が続くなら私は風のように走って迎えにいくよ………」
ジンーとくる言葉に涙が一滴こぼれたが、りくが話終えた瞬間にやって来た電車で涙は飛んでいった。
電車の窓からりくが手を振っている。
何故だろう、彼女の発するコトノハは、どれも嘘偽りなく澄んでいるようだ。
「惚気た顔だな」
ニタニタした真人が、茶化してくる。いつものアホ顔がいっそう気持ち悪く見えるので、にやけないでくれ。
「りくは、ただ優しいだけだよ」
「俺は、お前が海で溺れたら助けてやる」
「金づちのくせに?」
「うるせぇ!」
何だかんだ、真人とりくがいないと、僕は、駄目なことを痛感していた。
この平和な世界が、僕が死ぬまで、海も空も陸も続いて欲しいと願いたい。
「じゃあ、明日も同じ時間で待ち合わせな!」
「また遅刻だろ?」
「うぐ……なんとか起きて、今度は俺がお前を待ってやんよ!」
まったく信用していない僕は、明日は少し遅めに家をでる計算をしていた。
そして駅の改札前で、帰る方向が違う真人と別れた。