空を翔ける一筋の流れ星
「お前、そんなこと今まで一言も言ってなかったじゃないか」


妃來を指差して、さっきと同じくらいの大声を出してしまった。

それでも、妃來は至って冷静で慌てる様子も焦りもなく、ただ小さく笑ってこちらを見ていた。


「だって、霊感が強いくらい人に話すことじゃないでしょ」


小さく笑っていたのが、悪戯っぽく笑いこちらを見てきた。

人に話すようなことじゃないって、俺は中学生のころから妃來に散々と幽霊の話とかしてきたじゃないか。

その度に何も見えないと言っていたのは、丸っきり嘘だったということか。

それを知っているからこそ、たった今知った妃來は霊感が強いという事実はやはり信じられないような衝撃だった。


「妃來さあーん」


妃來が自分のことを見えているということが、空を今にも泣き出しそうなくらい喜びを爆発させたようだ。

これでもかというくらいの勢いで妃來の目の前に移動して座った空の後姿は、もし尻尾があったならば思い切り振り回しているだろうと思わせるくらい嬉しそうだった。


「空ちゃん、近いよ」


頬を少し赤くさせて恥ずかしそうに空から少し視線を外す仕草を見ると、本当に妃來は霊感が強くて空のことが見えていて、そして声も聞こえているようだ。

今まで俺が見えていたものが妃來も一緒に見えていたのかと思うと、今まで一人で騒いでいた自分が妙に恥ずかしくなった。

一人で霊感が強いからとか騒いでいたのに、それを冷静に妃來が見ている様子を想像するとまた恥ずかしくなってきた。
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