空を翔ける一筋の流れ星
「翔のお母さんは大学を卒業したら、家に戻って来いって言っているの」


ため息を交えながら、簡潔に一言だけ吐き出すように妃來は言った。

いつもこの話題になると俺がまず機嫌が悪くなり、それを見て妃來も機嫌悪くなり、結局二人とも機嫌が悪くなってしまう。

二人のときなら無言で過ごすだけで問題無いのだが、今回は俺たちだけでなく空がいる。



案の定、二人の様子を見て、空はかなり焦っているようだった。

小刻みに左右を見て、何かを言おうとしては止めてを何度も繰り返している。


「でも、それって心配してくれている証拠ですよね」


「・・・」


「・・・」


折角、話を切り出したというのに、二人が何も答えないので空の焦りは更に増した。


「わ、私の親なんて自慢じゃないですけど、私のことを全く心配してくれませんでしたよ。

心配どころか、私のことを何一つ分かっていませんでしたよ」


言い終わった空の顔はかなり自慢気になっていた。

その顔を見て、色々なことが込み上げすぎて、機嫌を悪くしないように努力していたものが音を立てるように崩れていった・・・
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