空を翔ける一筋の流れ星
「それどころか・・・」


空が続けて話しているが、今の俺には何も耳に入ってはこなかった。


「空」


その声にこちらを向いた空の顔は明らかに怯えていた。

妃來は慌ててこちらに寄ってきて、俺の肩に手を掛けようとするがそれを半ば強引に振り払った。


「そんなこと自慢するんじゃねえよ」


ほんの少し前までは三人は明るい笑顔だったのに、この一言で部屋の空気が一気に凍りついた。

この空気に必死で耐えるのに精一杯で声を出すことができずに固唾を呑む空と、どの言葉を掛けても今の俺には無駄と分かっていて諦めたような顔をしている妃來の二人に背を向けた。

これ以上この顔を二人に見せたくない、空をこれ以上怯えさせたくない、妃來をまた悲しませたくない・・・

俺なりの必死の足掻きだった。


「空・・・

お前には辛い言葉だけど」


「・・・

はい」


何も入ってこなかった耳に、か弱い返事だけがスッと入ってきた。

その声で今の空がどんな顔をしているかと想像すると、少しだけ胸が苦しくなった。



それでも・・・


「死んだら何も自慢できねえんだよ」


目を閉じると、親のことや自分が抱えているもの全てが鮮明に映像として流れていく感じがして、自然と拳を握り締めていた・・・
< 58 / 123 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop