空を翔ける一筋の流れ星
「空ちゃん、翔があんなこと言ってごめんね」


ドアノブに手を掛けて開けようとしたとき、中から二人の会話が聞こえてきた。

立ち聞きするつもりはないのだが、今は入ってはいけないような気がしたのでしばらくその場でジッとしていることにした。


「いえ、妃來さんが謝ることじゃないですし、翔さんの言ったことも納得というか、気持ちは分かりますから」


「いや、さすがにさっきのは私が聞いていても言いすぎだと思うわ」


「そんな・・・」


しばらく沈黙が続いていて、入るのならば今なのかもしれない。


(いや、逆にわざとらしくないか)


「翔の家ね・・・」


一瞬だけ・・・

ほんの一瞬だけ躊躇してしまったせいで、またもや入るタイミングを逸してしまったようだ。

開けようとした手を下ろし、もう一度その場に立ち尽くした。


「地元じゃ、結構有名な会社なの。

でも、私が言うのは失礼だけど、よく自慢ばかりするから翔の両親はあまり評判が良くないの」


「だから・・・」


「さっきの言葉は多分ね。

両親は翔に会社を継がせたいみたいだけど、そんな両親を翔は苦手というか、ストレートに言っちゃえば好きじゃないから・・・

だから、家はおろか地元に帰りたくないのよ」
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