空を翔ける一筋の流れ星
立ち尽くしていたその場に音を立てないように静かにしゃがみ込み、両手で耳を塞いだ。

両親の話を、家の話を聞きたくない、そのことを考えている俺のことを妃來の口から聞きたくはない。

目を閉じると、空の悲しくありながら戸惑っているような表情が浮かんできて、そんな表情を空にされたくない。



でも



そう思っても全て自分が悪いのだからどうすることもできない事実だ。

『藤沢翔』という自分がたまらく嫌だ・・・


「でもね、翔がああいうことを言うのって、本当に大事な人にしか言わないから。

翔は好き嫌いがはっきりしている性格だから、好きじゃない人には絶対に自分の本当の気持ちとか伝えないし、真剣に向き合わないから」


その言葉に悔しさで滲ませていた涙が押し出され、嬉しさで目が涙で一杯になった。

いつも妃來は俺のことをかばってくれる。

それも適当にじゃなくて、真剣に俺をかばってくれる。

その優しさが一杯になった涙を目から溢れ出させ、頬へと流れ出させてくれた。


「羨ましいな。

会って一ヶ月も経ってないのに、空ちゃんは翔にとって大事な人にもうなっているんだもん」


立ち上がり、音を立てないようにゆっくりとアパートから離れていった。
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