空を翔ける一筋の流れ星
気が付くと、俺は幽霊の記憶から現実へと戻っていた。

知らず知らずのうちに膝をついていたようで、後ろでは必死で空が俺の名前を叫んでいる。

幽霊のほうへと視線を戻すと、こちらに顔を向けずにどこかへ遠ざかろうとしているようだった。


いつも一緒の三人


想いを寄せる相手


「待てよ」


そして・・・



それらが全て崩れたとき


悲しいまでの記憶。


「馬鹿野郎っ」


ついていた膝をゆっくりと起こし、両手を力強く握り締めながら立ち上がる。

なりふり構わず大声を出し、幽霊のほうへと一歩踏み出す。


「俺だって・・・

俺だって、一緒だよ」


幽霊の記憶と、自分のことを重ね合わせる。

それは悲しいくらいに似ていて、俺の胸を苦しませる。

自分の中で忘れかけていた・・・

いや、忘れようとしていたことが甦ってしまったのだ。


「ずっと、一緒だった。

一緒だったから、好きということに気付けなかった。

俺はあいつが好きだってことに気付いたのとほぼ同時に、親友から相談されたんだよ」


空気が重くなっていくようだった。

それは先ほどの重さとはまた違った、別の重さだった。


「あいつのことが好きだ、と。

そして、付き合えるように協力してくれ、ってな」


幽霊は変わらずこちらに顔を向けてこない。

空は呆然と立ち尽くしているような感じで、いつもの笑顔など微塵も無かった。

いくら勘が鈍い空でも、もうさすがに気付いているのだろう。
< 85 / 123 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop