空を翔ける一筋の流れ星
「私は・・・」


空が小さく呟く。

視線は下を向いたままだが、両手の拳には力が入っているように見えた。


「私は翔さんと逆の立場でした。

一葉さんと同じく、親友に相談をした側です。

だけど、私は既に内緒で二人が付き合っていたことを告げられました。

そして、そのまま走り去り・・・」


それ以上は言わなくていい


言葉にしようとしたが、そのことを汲んだように空は優しい表情をこちらに向けてきた。


「だから、見守る側になった翔さんはよかったと思います。

逃げたのではなく、見守る側になった。

凄い勇気だったと思います。

そんな翔さんが、私は好きです」


その言葉に、胸の鼓動が一気に高鳴るのが分かった。

俺が持っている気持ちが大きくなり、収まりきらない状態になり、頭の考えよりも、思わず言葉が出てきた。


「自分を偉いとか、そんなことは今でも思えない。

だけど、生きているおかげでまた好きだと思える女の子に会えた」


空が驚いたようにこちらを振り向く。

俺は視線を逸らさずに、唇をきゅっと噛みしめて続きを口にする。


「何で死んじゃったんだよ、お前。

死ななかったら、俺たち生きて出会えたかもしれないのに。

そしたら、思い切り抱き締めて『好きだ』って言えるのに」


空が泣いているのが分かった。

そのことに対して戸惑い、思わず下を向いた。



そして、その涙を拭ぐい前を向いた。


「えっ」


ほんの二、三秒ほど。


たったそれだけの時間で、俺の目の前から空の姿が消えた。

辺りを見渡してもやはり姿はなく、俺はそのまま呆然と立ち尽くしてしまった。
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