デスペリア
「そう言わないでくれよ。僕の中じゃ、男の子用と女の子用で名前候補がいくつかあるんだから」
「ふふ、なにそれぇ」
「とりあえずは、僕と君の名前にある『リ』はつけたいだろー。それからね」
「はいはい。名前はあなたに任せるわ」
絵に描いたような幸せぶりだった。
最高の幸せとは、彼らのように愛すべき者と過ごす時間にあるのかもしれない。
少なくとも夫はそう断言していた。断言していたからこそ、受け止めきれなかった。
狂ってしまった歯車が。