デスペリア
「きゃあ!」
「リタっ!」
妻の悲鳴で、夫は狂ったようにどたどたと階段を上がった。途中、けつまずいて転ぶも、すぐに立ち上がり、寝室に向かう。
「リタ!――っ」
扉を開けるなり目に入ったのは、妻と、妻の前で槍を持つ魔物の姿。
床には割れたガラス片が散らばり、コウモリのような魔物の羽にも微量ながら刺さっていた。
「やめろおぉぉ!」
夫がすかさず妻と魔物の間に入った。
妻を包むようにしながら、顔だけを魔物に向ける。
「やめっ、やめてくれ!妻だけは殺さないでくれ!」
声帯をいっぱいまで広げて懇願した。