デスペリア


あまりにも脆弱な。だからこそ、情が出たのかもしれなかった。


魔物が未知なる迷路に迷いそうになる直前。


「動くなっ」


部屋に新たな人物が現れた。


魔物が目を向ける前に、痛みが腹に刺さる。


腹に、腕に、頭に、右目に、足に、額に。連続して痛感したことで、撃たれたのだと魔物は気づいたが、力なくその場に倒れた。


「あ……」


撃った本人を見る前に、倒れた魔物を呆然と見てしまう。


「お前たちもさっさと避難しろ!北の大橋の向こうにはまだ魔物はいない!」


命令を出されたことでやっと夫はそいつを見た。


銃に弾をこめながら、ついてこいっ、と言って。


「がっ」


額に鋭利が突き刺さり、倒れた。


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