デスペリア


「……、いや」


誰も自ら進んで死ぬことはないだろう。


否定をすれば、灰色の目が私を見据えた。


「先ほど、そなたは意志に反すると言った。それは零師団隊長として――国に仕える者としての意志であろう。ならば、問いたい。そなたの意思はどこにいるのだ」


「私は……」


どこにいるのか。

意思は私自身にあると言いたいが、死地に自ら赴くのは私の意思なのか。


隊長としての責任、責務、それらを抜いて、もしも私が一介の民であったならば、果たして私は自ら死地に逝くという“意思”を持つのだろうか。


< 15 / 119 >

この作品をシェア

pagetop