デスペリア
オメックの手を払い、ありがとうと呟き、一歩進む。
「駒の分際ならば、潔く倒れよう」
すれ違い様に言い、振り返ることはせず。見てはいないが、オメックとて振り返らなかっただろう。
私は駒だ。
だが、悔いてはいない。
産まれながらではないが、いつの間にか私が成り果てたものに今更嫌だとは言わない。
何せそれは、己自身を貶(けな)すことに他ならないからだ。
私は私に誇りを持っている。
この位置に、地位に、責任に。どれを取っても、私が抜ければ全てが死んでしまうのだ。