デスペリア
(一)
「あーはははー、燃えろ燃えろ燃えちまいなーっ!」
緑が赤に塗りたくられていた。
強引な色染めは、赤から黒となり、物体全てを根こそぎ焼き払う。
「あー、まだそこにいたんだー」
さながら、かくれんぼの鬼のように笑い、草の間から顔を出す虫――にしては規格外に大きく、一つ目をギョロギョロさせたそれに、彼女は杖を向けた。
【焼けろ】
命令らしい冷たい声に呼応して、杖から火が発せられ、虫に引火した。
豚に近い鳴き声をあげて、蠢き、やがてぴたりと止まる。
先ほどからこれの繰り返しだった。