デスペリア
だからこそ、兵士たるキツは魔物討伐にかりだされ、こうして責務を果たしたわけだが。
「ごほっ」
血泡が口から零れた時点で、自分も相当危ういと気付いたらしい。
気付いた。
死に直面しているというのに、まるで他人事に思えたのは――はて、他人事にしたかったからか。
目も口もないはずの黒い魔物かと思っていたが、紫の液体を出したことで、キツは、ああこいつにも口はあるのか、と霞む目で見た。
ごぼごぼと紫の液体を吐く。人間とは比べものにならない不気味さだが、自分の体を見て、こちらも同じかと剣の柄を握った。