デスペリア


(一)


街を襲っていた。


小さい街で、取り柄と言えば炭鉱が盛んで資源が豊富程度の街は、攻めいるのは容易かった。


「報告!街にいる人間共は北の大橋を抜けて逃げている模様です。いかがなさいますか」


「放っておけ。街に残っている兵だけの相手をしろ」


「了解いたしました」


去る部下を見送る前に、茶化すような口笛のせいで目線が外れた。


「なあなあ、隊長さんよー。いいのー?逃がしちゃってさ」


口笛の主は第四部隊副隊長、いわば直属の部下である男だが、ユーズはあまり彼を信用していなかった。


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